世界無形文化遺産に登録された、伝統製法の希少なワイン造りを追う。ワイン発祥の地ジョージアから最古にして最良の味わいをお届け。「Our blood is wine(私たちの血はワイン)」──。ジョージア人のアイデンティティーをたどる、ワインの故郷への旅。ワインと唄とともにある、豊かな生活。全米屈指のソムリエであるジェレミー・クインは、シカゴで勤めていた4軒のレストランを辞め、ワインの起源を知るためにジョージアにやってきた。ジョージアは、ワイン発祥の地として知られ、その起源は今から8000年前の紀元前6000年(新石器時代)に遡る。トビリシのジョージア国立博物館を訪れたクインは、8000年前の出土品であるクヴェヴリという素焼き土器の甕が、現在ジョージアでワイン造りに使用されているものとほとんど同じ形であることを知る。その最古のクヴェヴリの中からは、ワインを造っていた証であるブドウの種も発見されている。ソヴィエト連邦による占領以前は、潰したブドウをクヴェヴリに入れて発酵させる原始的なワイン醸造方法が受け継がれてきた。だが、この古来の伝統醸造は、継承が口伝によっていたためマニュアルがなく、70年に及ぶソ連時代の工業化により衰退しかかっていた。畑が没収され、自分たちの手で作ったワインを売ることはできなくなっても、各家庭で自家消費用のクヴェヴリワインが細々と造り続けられてきたことで、かろうじて伝統は続いたのだった。21世紀において、まさに伝統製法のワインを蘇らせることが、ジョージアが自らのアイデンティティーを確立する中心力になっているのだ。