チチッチ&イリュリア・コンソートが切り拓く新たな古楽の深淵は、J.S.バッハ以前のドイツにおいて、ビーバーやヴェストホフと並んで最も重要なヴァイオリニストの一人とされている、ヨハン・ヤーコプ・ヴァルター(1650-1717)のヴァイオリン作品集。フィレンツェのメディチ家コジモ3世の楽団のヴァイオリニストやドレスデン宮廷のコンサートマスターなどを務めたJ.J.ヴァルター。1676年に出版された「スケルツィ・ダ・ヴィオリーノ(ヴァイオリン独奏と通奏低音のためのスケルツォ集)」は、ピッツィカートでハープを、弓でナイチンゲールの歌を模倣するなど、パガニーニの技法を先取りしたものもあり、ニ長調ソナタ(第3番)におけるポリフォニックな可能性、第4番終盤の遊び心、「カッコウの真似(Imitatione del cuccu)」の創意工夫、そしてボヤン・チチッチのお気に入りである最後のアリアの劇的なメランコリーなど、バラエティに富んだ作品が収められており、チチッチはバッハのポリフォニー作品をより深く理解するために彼の音楽を聴くことが不可欠であると信じています。