広島への原爆投下に着想した本作『ドナ・ノービス・パーチェム』。タイトルは、バッハの大作「ロ短調ミサ曲」の最終曲で、ラテン語の「Dona Nobis Pacem」から取られています。振付には、ジョン・レノンとオノ・ヨーコによる「イマジン」、広島の原爆投下時に熱線で残った人間の跡といわれる「人影の石」について詠んだ詩(独詩人ギュンター・クーネルトによる)が引用されています。ノイマイヤーは1986年の初日本公演時に広島の平和記念公園を訪れ、平和記念資料館にも足を運んでいます。また2022年2月24日以来続くロシアのウクライナ侵攻など、本作は人類を揺るがす苦しみに対して向けた世界平和への祈りと言えるでしょう。