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小宮 理実 (こみや りみ)
行事食研究家。京都生まれ。季節感を大切にした日本のおせち料理や行事食を専門とし、お祝いの食の商品開発を手がける。全国の子どもたちに『本物の食』を伝える食育活動にも力を注ぐ。一般社団法人行事食協会 代表。
「おせち料理」の起源は、「弥生時代」の稲作文化と密接に関係しています。
縄文時代の終わりに中国から伝わった稲作は、弥生時代にかけて広がり、社会は狩猟中心から農耕中心へと変化していきました。
その後、中国の暦にある二十四節気という季節の変わり目を示す区切りが日本に伝わり、季節ごとに作物の収穫を神様に感謝し供えた、「節供」という風習が生まれます。 この「節供」で供えられた作物を料理したものが「御節供(おせちく)」と呼ばれ、現在お正月に食べられている「おせち料理」のもとになったとされています。
弥生時代には「お供え物」であった「御節供」が定着したのは、奈良時代から平安時代にかけてのことです。
この時代になると、暦に合わせた儀式が宮中行事として執り行われるようになり、「節会(せちえ)」と呼ばれる儀式が開催されるようになりました。
節会では、唐の暦法に基づいた節目の日に、邪気を祓い、不老長寿を願うために「御節供」が振る舞われました。
平安時代、「五節会」は特に重要視され、1月1日の元日、1月7日の白馬(あおうま)、1月16日の踏歌(とうか)と1月の3回に加え、5月5日の端午(たんご)、11月の豊明(とよのあかり)の計5回には、そのたびに「御節供」が振る舞われていました。
ただ、この時代には、五節会のお祝い料理すべてが「御節供」と呼ばれており、まだ正月料理という位置づけではありませんでした。
江戸時代になると、「五節供」(1月7日の人日の節供、3月3日の上巳の節供、5月5日の端午の節供、7月7日の七夕の節供、9月9日重陽の節供)が正式に定められます。
幕府の公式行事として位置づけられたことで、庶民の間にも「御節供」が広まり、節供ごとに旬の食材を用いた料理を食べ、休息をとるようになりました。
特に、1月7日の「人日の節供」は五節供の中でも最も重要とされ、この日に振る舞われる料理は「正月料理」として定着しました。
この時代の「御節供」には、山や海の幸が取り入れられ、さらに江戸時代後期になると、料理一つひとつに意味が込められるようになります。 こうして「人日の節供」の「御節供」は、新年を祝うために食べるものとなりました。
また、大みそかにおせち料理を作り、お正月に家族で食べる風習も生まれました。 このようにして、「おせち料理」のもととなった「御節供」は、日本の伝統的な正月料理として定着したのです。
江戸時代末期から明治時代には、おせち料理を「重箱」に詰めるスタイルが定着しはじめました。
重箱自体は室町時代から存在していましたが、おもに酒宴などで使用されることが多かったとされており、江戸時代末期、おせち料理は重箱に詰めるのが一般的になりました。
おせちが重箱に詰められるようになった理由は、いくつかあります。
ひとつは、箱を「重ねる」を、福を「重ねる」という意味合いにかけたこと。
また、殺菌効果の高い漆を使った重箱に詰めることで保存がきき、場所をとらず、お客様に振る舞いやすくなるという理由もあります。
このように「おせち料理」は、江戸時代末期にはほとんど現代に近い形になりました。
しかし、これが「おせち」という名称で呼ばれるようになったのは、第二次世界大戦後のこと。 それまでおせち料理は、「食積(くいつみ)」や「蓬莱(ほうらい)」と呼ばれていましたが年に何度かある節供の中でも一年の始まりである正月が最も重要視された節日であることから「おせち料理」は次第に正月料理のことを指すようになります。 また、戦後これまで家庭で作られていたおせち料理が、デパートなどで販売されるようになり、この際に商品名として「お節(おせち)」という名称が使われたことで 日本の伝統的な正月料理は、広く一般的に「おせち料理」と呼ばれるようになったのです。
弥生時代からの長い歴史を経て、私たちにも親しまれている「おせち料理」。
近年、おせち料理のスタイルは多様化し、伝統的なものだけでなく、洋風や中華風、和風折衷など様々な商品が販売されています。
有名シェフ・レストランがプロデュースした商品などは、毎年高い注目を集めています。
また、小さな世帯規模でも楽しめる少人数向けのおせち料理も増えており、人数や嗜好に合わせて購入することができます。
さらに、購入方法も多様化しており、百貨店だけでなく、ネット通販でも手軽に重箱入りの本格的なおせち料理を購入できます。
新しい年を迎える前に、ぜひ(サイト名)を隅々までチェックして、あなたの心をわくわくさせる「おせち料理」を探してみてください。
行事食研究家。京都生まれ。季節感を大切にした日本のおせち料理や行事食を専門とし、お祝いの食の商品開発を手がける。全国の子どもたちに『本物の食』を伝える食育活動にも力を注ぐ。一般社団法人行事食協会 代表。