新規会員登録
弥冨 秀江 (いやどみ ひでえ)
管理栄養士。女子栄養大学生涯学習講師。株式会社ヘルスイノベーション代表。長年の病院、企業での豊富な栄養指導、臨床経験をもとに、出版、出筆活動、企業の食品およびメニュー開発など食事療法の新しい領域を創造する。
「おせち料理」は多くの食材があって、詰めるのが難しそうに感じるかもしれません。
しかし、詰める順番や配置、配色など、盛り付けのポイントを押さえれば、はじめてでも美しく詰めることができます。
おせち料理を日持ちさせるために、食材はよく冷ましてからお重に詰めましょう。きちんと冷ますことで、食材から余計な水分が出てくるのを防げます。
食材は、重箱に向かって「奥から手前に」、整列させるように詰めていくと綺麗に仕上がります。
また、高さのない「昆布巻き」などは両端を揃えて重ね、「えび」や「たけのこ」などは立てて並べると立体感が出て華やかに見えます。
「伊達巻」や「かまぼこ」など、固形の食材を先に詰めましょう。
形の崩れにくい固形の食材を詰めたら、味や香りが移らないようにカップに入れた「栗きんとん」や「煮物」などで、隙間を埋めるのがおすすめ。
重箱に隙間なくきっちり食材が詰められていると、型崩れしにくく豪華に見えます。
おせちの食材は「祝い肴」「口取り」と呼ばれる酒の肴、「焼き物」「酢の物」「煮物」の5種類。
詰め方には伝統的なルールがあり、どの段に何を詰めるかも決まっています。
また、正式な重箱の段数は四段ですが、近年は二段の重箱も販売されています。
ここでは「二段」「三段」「四段」の重箱を例に、おせち料理を盛り付ける際の基本的なルールを紹介します。
いずれのお重も共通で、一の重には、黒豆や数の子などの「祝い肴」、伊達巻、昆布巻などの「口取り」を詰めます。
「祝い肴」は新年の祝いを表し、「口取り」は食欲をそそる料理であることから、「新年を明るく元気に迎える」という意味が込められています。
二の重には「煮物」「焼き物」などメインの料理を詰めます。
三段重は、一の重に「祝い肴」「口取り」、二の重に「焼き物」「酢の物」、三の重には「煮物」を詰めます。
おせち料理の「焼き物」は、縁起物とされます。
魚や肉を焼くことで、「火を使って悪い気を払い新しい年を迎える」という意味が込められているのです。
また、古くから保存食として親しまれている「酢の物」を一緒に詰めることで、腐敗防止や殺菌効果が期待できます。
四(与)段重は、一の重に「祝い肴」「口取り」、二の重に「焼き物」、三の重に「酢の物」、四の重箱には「煮物」を詰めます。
ちなみに、地域によっては「五の重」まで使用することがあります。
五の重は「控えの重」として、年神様から授かった福を入れるために空にしておく、という風習があるのです。
上手に詰めたおせちを美味しく完食するためには、適切な保存方法も覚えておく必要があります。
おせちは、元々お正月の三が日に食べることを想定して作られているため、酢を使ったものや味が濃いものが多いです。さらに昔は室温が低かったため、常温で保存できましたが、現代では冷蔵庫での保存が必要です。
おせち料理を詰める際は、「伊達巻」と「栗きんとん」など、同系色の食材を離すと配色のバランスが良くなり、華やかに見えます。
また、おせち料理に色を足す「あしらい」を加えると、簡単に彩りが整うのでおすすめ。
たとえば、古くから「魔除けの色」とされる「赤色」の食材(ちょろぎ、南天の実など)を飾ったり、食材を上品に引き立てる「緑色」の葉っぱ(笹の葉、葉蘭など)を料理の下に敷いたり。
これらの「あしらい」は、初心者でも簡単に取り入れられるので、盛り付けの際には用意しておくのが良いでしょう。
おせちの重箱の仕切り方は、「市松型」「段詰め(段取り)」「升掛」「七宝詰め」「末広」など多種多様。
複雑そうに見えますが、市販の仕切りを活用すると簡単に美しい盛り付けができます。
また、先に簡単なイラストを描いておくと、どこに何を詰めるかをイメージしやすくなりますよ。
市松
段詰め
(段取り)
升掛
七宝詰め
末広
おせち料理には、地域によって様々なルールや独自の作法があります。
きれいな詰め方と併せて、ルールを知っておくことで、より一層おせち料理を通じて日本文化を感じられます。
偶数には、「割れる」「別れる」など、縁起が悪いイメージがあるとされています。
特にお正月のお祝いである「おせち」においては、一段ごとに詰める料理の数が3、5、7などの奇数になるよう工夫しましょう。
日本では伝統的に「左」が上位とされる慣習があります。
「おせち」の食材を詰める場合にも、尾頭付きの「タイ」や「えび」などは、頭を左にするのが一般的。
また、頭の向きが揃うことで見た目も整然として、美しい仕上がりになります。
古くから日本で親しまれている「右紅左白」というしきたりをご存じでしょうか。
特にお祝いの場面でよく見られるこのしきたりは、「向かって右側を華やかな色にする」ことで、良い方向に向かうという意味が込められています。
「おせち料理」では紅白かまぼこの、紅色を右側にします。
最後に「おせちをオシャレに見せるポイント」も紹介します。
おせちの「オシャレ見え」ポイントを押さえて、SNS映えする素敵なおせちを作ってみましょう。
食器選びは、おせちの雰囲気を大きく変えます。まずメインの重箱を選んだら、サブ食器、小物などをイメージに合わせて選びましょう。
漆塗りの食器は、おせち料理の「和」の印象を引き立てます。また、洋風のおせちにはガラス食器を合わせてみるなど、遊び心を加えても素敵ですね。
テーブル全体のバランスを考えて、3色以内で統一感のある配色にまとめるのもポイントです。
重厚感のある漆塗りの重箱に、大皿を合わせれば、テーブルが豪華に見えて、ボリューム満点。
特に白のお皿はすっきりとした印象を与え、メインの重箱を引き立てます。
平面的になりやすい「ワンプレート」も、豆皿や小鉢を加えれば華やかなアクセントに。
和柄のテーブルクロスやお正月飾りを合わせると、手軽にオシャレな雰囲気を演出できます。
おせちの食材を「半月盆」に少しずつ盛り付けて、料亭風の雰囲気を出す方法もあります。少人数で食べる場合や、一人ずつおせちをセッティングしたい時におすすめです。
「おせち料理」を詰めるときの基本的なルールやポイントを紹介しました。
初めての方でも、この記事を参考にして美しいおせちを作ってみてくださいね。皆さんが素敵なお正月を迎えられることを祈っています。
管理栄養士。女子栄養大学生涯学習講師。株式会社ヘルスイノベーション代表。長年の病院、企業での豊富な栄養指導、臨床経験をもとに、出版、出筆活動、企業の食品およびメニュー開発など食事療法の新しい領域を創造する。